ホーム ›
栽培ガイド › ブルーベリーの低温要求量と休眠の研究|暖地で育てるヒント
ブルーベリーの低温要求量と休眠の研究|暖地で育てるヒント
ブルーベリーが冬に必要とする寒さの量(低温要求量)と休眠、暖かい地域での栽培について、実際に読んだ研究5本を日本語でやさしくまとめました。暖かい地域で育てる方のヒントも、研究の内容にもとづいて紹介します。
研究・論文
ブルーベリーは、冬の寒さにあたって初めて、春に元気に芽を出し花を咲かせます。この「必要な寒さの量」が低温要求量(チリングアワー)です。ここでは、実際に読んだ研究5本から、暖かい地域で育てるときのヒントをまとめました。
暖かい地域向けの系統は何時間の寒さで花が咲くか(フロリダ大学・2015年)
どんな研究?
アメリカ・フロリダ州の大学が育てている、サザンハイブッシュ系ブルーベリーの有望な23系統と2品種を、フロリダ州の2か所で調べた研究です。枝を切り取って暖かい場所で芽を出させる方法で、花芽が必要とする寒さの量を推定しました。もともとこの育種プログラムは、冬に0〜7℃の寒さが年に300時間以上ある地域で系統を選んでいます。そのため、フロリダ中部・南部のような暖かい地域では、休眠を覚ますための薬剤(シアナミド剤)が必要になる品種が多い、という背景があります。
わかったこと
- 調べた系統のうち72%は、0〜7℃の寒さに200時間あたった段階で、花芽の70%以上が発芽しました。
- シアナミド剤を使うと、寒さが足りない株では、花芽の発芽が早まるか、発芽する割合が増えました。
- つまり、同じ「暖かい地域向け」でも、必要な寒さの量は系統ごとに違います。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:暖かい地域で育てるなら、寒さの少ない土地向けと明記された品種を選ぶのが近道です。なお、この数字は大学が開発中の系統のものです。市販の苗木の数字ではありませんので、そのままあてはめないでください。
低温が足りない年のブルーベリーと休眠打破剤(フロリダ大学・ジョージア大学・2015年)
どんな研究?
フロリダ州南部からジョージア州南東部にかけて広がっている、早い時期に出荷するサザンハイブッシュ栽培についての総説(これまでの研究のまとめ)です。冬の寒さが足りない年が多く、開花期の遅霜も心配されます。そこで生産者が使う休眠打破剤(シアナミド剤)の効果と注意点を整理しています。
わかったこと
- サザンハイブッシュ品種の必要な寒さは、おおよそ200〜600時間の幅があります。
- 12月31日までに7.2℃以下になった時間は、年と場所で大きく違いました。レイクアルフレッドでは平年85時間、2010/11年は254時間、2011/12年は22時間でした。アラチュアでは平年283時間、2010/11年は520時間、2011/12年は195時間でした。
- 品種'Misty'では、事前の寒さが0時間のとき、花芽の傷みは濃度1%で20%、2%で38%でした。事前に300時間の寒さがあると、1%で2.3%、2%で19%に下がりました。薬剤を使わない株は0.1〜1.5%でした。
- フロリダでは12月中旬から1月上旬に散布し、自然の芽吹きの30日以上前に行うのが一般的です。濃度1.5%や2%では花芽の傷みと収量の減少が見られました。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:同じ場所でも、冬の寒さの量は年によって2倍以上も違うことがわかります。「去年は実がたくさんなったのに今年は少ない」という年があっても、品種のせいとは限りません。この論文は生産者向けで、家庭での薬剤の使用については述べていません。
ブルーベリーの低温モデルは何を測っているか(アメリカ・ポモロジー学会ワークショップ・2015年)
どんな研究?
「寒さの量」を計算するための、チリングモデルと呼ばれる計算方法を整理した論文です。2014年7月にフロリダ州オーランドで開かれた、亜熱帯・熱帯でのブルーベリー生産がテーマのワークショップの報告の一つです。この論文はM.R. Warmundさんの単著で、読めたのは要旨だけです。そのため、ここでは要旨に書かれている内容だけを紹介します。
わかったこと
- もともとは樹木の果樹向けに作られた計算方法が、ブルーベリーにも広げて使われてきました。
- 落葉性ブルーベリーでは、従来の計算方法の当てはまりが、遺伝子型(品種)と場所によって変わります。
- 品種や栽培方法が変わっていくので、新しいモデルが必要になるかもしれないと述べています。
- 役に立つモデルは、(1)寒さを数え始める時期、(2)寒さとして数える温度の範囲(その重みづけ)、(3)休眠が覚めたと判断する目印の3つを決めている、と整理されています。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:品種の説明に書かれた「低温要求量○○時間」は、どの計算方法で数えたかによって変わりうる数字です。目安として見て、近所で実際に育てている人の経験もあわせて参考にすると安心です。
シアナミド剤で芽吹きを早める試験(高知大学・2018年度)
どんな研究?
高知大学の報告書(2018年度、2019年3月付)です。暖かい高知で、寒さの少ない品種の芽吹きをシアナミド剤(CX-10の0.5%液)でどこまで早められるかを、温室・屋外・人工気象室の3つで試しました。正式な要旨はない報告書で、本文の要約部分を読んでいます。
わかったこと
- 人工気象室で3℃の低温に当てたあと25℃にする試験では、品種によって反応が分かれました。
- 'O'Neal'(必要な寒さ400〜500時間)は、50%の芽吹きが6日早まりました。'Norman'は100%の芽吹きが3〜4日、'Flicker'は50%の芽吹きが5日早まりました。
- 'Kestral'は芽吹きが2日遅れ、'Primadonna'は11月26日と30日の処理で芽吹きが0%でした。
- 屋外のラビットアイの試験(高知県内)では芽吹きは早まりましたが、遅い時期の処理は花芽の発達を遅らせました。一部では枝の先が傷む薬害のような症状も出て、品種で感じやすさが違いました。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:同じ薬剤でも、品種と時期によって、効く場合・逆効果の場合があるとわかります。暖かい地域では、まず寒さの少なくて済む品種を選び、薬剤は専門家に相談してからにしてください。
ラビットアイの花芽と葉芽が眠る仕組み(バージニア工科大学・1992年)
どんな研究?
ラビットアイ系の'Tifblue'を使い、寒さ、シアナミド剤、温湯、芽の鱗片を取る処理が、花芽と葉芽の芽吹きにどう効くかを調べた修士論文です。大学のリポジトリで公開されていて、要旨を読みました。
わかったこと
- 花芽が必要とする寒さは、株ごとの試験で500時間でした。
- シアナミド剤が花芽の芽吹きを促したのは、300〜500時間の寒さがあった株だけでした。花芽は葉芽より薬の傷みを受けやすい一方、寒さが増えると耐えやすくなりました。
- 葉芽は、寒さが足りていても眠ったままのことがありました。花芽を取り除くと葉芽の芽吹きが増えました。著者は「花芽が葉芽の芽吹きを抑えている」と結論しています。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:花芽がたくさんついた枝では新しい芽が出にくいことがある、という仕組みの説明になっています。1品種の実験ですが、「花芽の数が新芽の出方に関わる」という目で樹を見ると、剪定の考え方にも役立ちます。
まとめ
必要な寒さの量は、品種・系統によって大きく違います。
同じ場所でも、冬の寒さの量は年によって大きく変わります。
休眠打破剤は、効く場合も傷む場合もあります。濃度・時期・品種で結果が変わります。
寒さの数え方(モデル)自体にも、まだ検討が続いています。
暖かい地域では、寒さの少なくて済む品種選びから始めるのが基本です。
読んだ論文は、フロリダ州やジョージア州などアメリカ南部の研究が中心で、日本の高知県の報告書が1本あります。日本の暖かい地域でも、まずは品種ごとの低温要求量を確認し、その年の冬の寒さの量を見ながら育てるのが、論文からいえる共通の姿勢です。
| 研究 | ひとことで言うと |
|---|
| フロリダ大学 2015 | 72%の系統が200時間の寒さで花芽の70%以上が発芽 |
| フロリダ大学・ジョージア大学 2015 | 必要な寒さは200〜600時間、年ごとの寒さの差が大きい |
| ポモロジー学会 2015 | 寒さの数え方(モデル)は品種や場所で当てはまりが変わる |
| 高知大学 2018年度 | シアナミド剤の効き方は品種と時期で違う |
| バージニア工科大学 1992 | 花芽が葉芽の芽吹きを抑えている |
ここで紹介した内容は、各論文の要旨や本文に書かれたことに基づいています。研究は特定の場所・品種で行われたものですので、お住まいの地域や品種に当てはまるとは限りません。
この記事で紹介した論文・報告
- Floral Bud Chill Requirement of Low-Chill Southern Highbush Blueberry Germplasm
James W. Olmstead, Rachel A. Itle, Silvia R. Marino, David E. Norden, Werner R. Collante ・ 2015 ・ Journal of the American Pomological Society 69(1):4-10 - Role of Plant Growth Regulators in Southern Highbush Blueberry Production Under Low-chill Conditions
Jeffrey G. Williamson, Gerard Krewer ・ 2015 ・ Journal of the American Pomological Society 69(1):11-15 - Blueberry Chilling Model Dilemmas
M.R. Warmund ・ 2015 ・ Journal of the American Pomological Society 69(1):26-30 - ブルーベリーの加温促成栽培に関する研究(令和元年3月付の報告書)
Kazutoshi Hamada, Yuki Lai, Masayuki Tomiyama, Bonsei Ogata ・ 2019 ・ 高知大学 2018年度報告書(2018年度事業) - Effect of chilling, hydrogen cyanamide, hot water and bud scale removal on bud break of 'Tifblue' rabbiteye blueberry
Mohd. Ridzuan Mohd Saad ・ 1992 ・ Virginia Tech 修士論文
論文の内容は、公開されている要旨・本文を日本語でやさしくまとめたものです。くわしい条件や数字は、下の「参考情報」のリンクから原文をご確認ください。
本記事は公的機関・種苗会社・園芸情報サイトなどの公開情報をもとに作成しています(2026年10月時点)。数値は目安であり、品種・地域・土壌により異なります。農薬を使用する場合は必ず登録内容とラベルをご確認ください。
参考情報
あわせて読みたい

研究・論文
ピートモスやもみ殻、樹皮などの培地、鉢の大きさ、ヤシ殻を使った養液栽培について、国内の試験場の研究結果を、数字つきでやさしくご紹介します。鉢の選び方や培地の配合を考えるヒントを、各研究にそえてお届けします。
読む →
研究・論文
アンモニア態と硝酸態の窒素の違い、葉が黄色くなる条件、樹が1年に使う窒素の量など、大学や試験場などの研究結果を、数字つきでやさしくご紹介します。肥料選びや量の考え方に役立つヒントを、各研究にそえてお届けします。
読む →
品種の選び方
初心者が育てやすいブルーベリー品種を、当サイトの品種図鑑の栽培難易度と各品種ページの育てやすさ・耐病性・土壌適応性の記述から選び、系統別の表にしました。注意点も併記し、順位は付けていません。
読む →