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ブルーベリー品種改良の歴史と研究|米国の育種と日本の品種
ブルーベリーの品種改良の歴史と、アメリカ農務省・大学の育種、日本の県が育てた品種や品種選定の研究5本を、実際に読んだ内容にもとづいて、日本語で、やさしくまとめました。数字は論文のとおりに載せています。
研究・論文
ブルーベリーは、野生の木から約100年かけて、人の手で育てられてきた果物です。ここでは、アメリカの大学・農務省の育種、日本の県が育てた品種や品種選びの研究5本を紹介します。
ブルーベリー育種の歴史(アメリカ農務省ARS・2007年)
どんな研究?
アメリカ農務省ARSのArlen Draperさんが、ハイブッシュ、ラビットアイ、サザンハイブッシュの育種の歴史と課題をまとめた論文です(Journal of the American Pomological Society 61(3))。
わかったこと
- 近代的な育種は、フレデリック・コビルが1906年に始めました。ブルーベリーが酸性土壌を好むことを突き止め、'Brooks'(1908年)、'Russell'(1909年)を発表し、1911年に交配しました。
- エリザベス・ホワイトがニュージャージー州の酸性土壌の土地を提供し、約100の野生選抜の収集にも協力しました。最良の子孫は7つの選抜の交配から生まれ、遺伝的な基盤が狭くなりました。
- ラビットアイの育種は1940年に始まり、最初の品種は1950年に発表されました。
- サザンハイブッシュは、フロリダ大学が1950年に育種を始め、低温要求量の少ない最初の品種'Flordablue'と'Sharpblue'が1976年に出ました。
- 育種は今でも、実生の選抜から発表まで約10年かかります。組織培養で、後半の選抜期間は短くなりました。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:今食べているブルーベリーは、約100年かけた交配の積み重ねの結果です。品種の「祖先」をたどると、おいしさや寒さへの強さの理由が見えてきます。
暖かい地域向けの早生品種'Suziblue'(ジョージア大学・2010年)
どんな研究?
ジョージア大学のD. Scott NeSmithさんによる、サザンハイブッシュの新品種'Suziblue'の発表論文です(HortScience 45(1))。2002年に、'Star'とTH-474の交配から植えた実生(1999年植え)の中から選抜されました。
わかったこと
- 必要な寒さは約400〜450時間(7℃以下)です。
- 果実は1粒2.2〜2.8gで、花は3月上旬に咲き、成熟は4月下旬〜5月上旬(ジョージア州南部)です。
- 自家結実性ですが、他の品種との混植が勧められています。さし木(緑枝挿し)で増やしやすい品種です。
- アラパハでの試験で、1株の収量は2006年に5.14kg('Star'は2.81kg)、2008年に5.41kg('Star'は6.32kg)でした。
- 特許出願中で、苗木の増殖はジョージア大学研究財団が管理しています。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:新しい品種は、「何を目標に作ったか」がわかると選びやすくなります。この品種は、早い時期に出荷できる暖かい地域向けです。
収量とやわらかさをねらった'Talisman'(アメリカ農務省ARS・2021年)
どんな研究?
アメリカ農務省ARSのMark K. Ehlenfeldtさんによる、ノーザンハイブッシュの新品種'Talisman'の発表論文です(HortScience 56(1))。2000年に'Magnolia'と'Elizabeth'を交配し、2005年に選抜しました。ニュージャージー州ハモントンで2013〜2019年に評価されました。
わかったこと
- 1株の収量は5.8kgで、比較品種'Duke'の6.2kgとほぼ同等です。果実は2.0gで、'Duke'の1.7gより大きくなります。
- 50%が熟す日は7月10日で、'Duke'(6月18日)より約3週間遅い晩生です。
- 糖度は10.7°Brix('Duke'は9.8)、酸度は0.94%('Duke'は0.60%)でした。
- 寒さに強く、LT50は-27.0℃でした('Duke'は-25.6℃)。
- 公有(パブリックドメイン)品種として発表されました。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:品種の特徴は、「収量」「大きさ」「熟す時期」「寒さへの強さ」などの数字の組み合わせで決まっています。'Talisman'は'Duke'より遅く熟し、実がやや大きく、酸味が強い品種ということになります。
群馬県で育成された早生品種'はやばや星'(群馬県農業技術センター・2006年)
どんな研究?
群馬県農業技術センターが育成した品種'はやばや星'の報告です(堀米ら、群馬県農業技術センター研究報告第3号)。'コリンズ'または'コビル'の自然交雑による実生から選ばれました。
わかったこと
- 1981年に約1万の実生を得て、約500本を1次選抜しました。1989年までに59本、1990年までに7系統に絞り、1991年3月に最終選抜しました。1992年12月に出願し、2004年3月に品種登録されています(登録番号11722)。
- 果実は1粒平均1.6gで、糖度は平均12.9%、酸味は強めです。
- 収穫のピークは7月9日ごろで、'コリンズ'と'おおつぶ星'より約6日、'あまつぶ星'より約13日早い品種です。
- 常温での日持ちは約3日で、-10℃前後でも凍害はありませんでした。
- 開花期に乾燥すると結実が落ちることがあり、他品種との混植とかん水が勧められています。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:日本の気候で作られた品種は、寒さや作業の都合に合わせて選ばれています。品種を決めるまでに、出願から登録まで11年あまりかかったこともあるとわかります。
岩手県で選ばれた優良品種(岩手県農業研究センター・2012年度)
どんな研究?
岩手県農業研究センターが、県内で育てている品種の中から、多収・大玉・良食味の優良14品種を選んだ報告です(平成24年度)。これは新品種を作る育種ではなく、日本の気候で、どの品種が向くかを調べた品種選定の研究です。
わかったこと
- 岩手県のブルーベリー面積は約37haで、栽培は昭和55年(1980年)ごろに始まりました。
- 基準は、多収が成木で1本あたり2kg以上、大玉が平均果重2g以上で2Lサイズが25%以上、良食味は職員による食味調査の評価でした。
- 'Nui'は1本あたり2,049gで平均果重2.2g、'Darrow'は2,004gで2L以上が38.8%でした。
- 糖と酸の比が高い品種は、生食での評価が高い傾向がありました。
- 用途は、生食向き、加工向き、摘み取り向き、市場出荷向きなどに分けて提案されています。
家庭で育てる人・食べる人へのヒント
ヒント:同じブルーベリーでも、味、収量、大きさ、収穫期間で得意なことが違います。何に使いたいか(生食・ジャム・摘み取りなど)で品種を選ぶと、満足度が上がります。
まとめ
近代的な育種は約100年前、アメリカで始まりました。
暖かい地域向け、寒い地域向けなど、目的に応じた品種が作られています。
日本でも、県の研究機関が育成や品種選定を行っています。
品種の特徴は、数字で比べると選びやすくなります。
品種の説明には、収量、果実の大きさ、熟す時期、寒さへの強さ、必要な寒さの量などの数字が並びます。こうした数字は、育種家が長い年月をかけて選び抜いてきた結果です。ご自宅の気候や、食べ方の好みに合う品種を選ぶときに、数字の意味がわかると役立ちます。
| 研究 | ひとことで言うと |
|---|
| USDA-ARS 2007 | 1906年にコビルが開始、基盤の狭さが課題 |
| ジョージア大学 2010 | 暖かい地域向けの早生品種 |
| USDA-ARS 2021 | 収量と大きさをそなえた晩生品種 |
| 群馬県 2006 | 日本で育成された早生品種、登録まで11年あまり |
| 岩手県 2012年度 | 多収・大玉・良食味で14品種を選定 |
ここで紹介した内容は、各論文や報告書に書かれたことに基づいています。農研機構の品種育成の論文は今回は見つけられなかったため、含めていません。
この記事で紹介した論文・報告
- Blueberry Breeding: Improving the Unwild Blueberry
Arlen Draper ・ 2007 ・ Journal of the American Pomological Society 61(3):140-143 (USDA-ARS) - 'Suziblue' Southern Highbush Blueberry
D. Scott NeSmith ・ 2010 ・ HortScience 45(1):142-143 (University of Georgia) - 'Talisman' Northern Highbush Blueberry: A Productive Late-midseason Cultivar
Mark K. Ehlenfeldt ・ 2021 ・ HortScience 56(1):101-103 (USDA-ARS) - ブルーベリー新品種「はやばや星」の育成 (A New Cultivar 'Hayabayaboshi' of Blueberry)
Mitsuru Horigome, Tomoyuki Okada, Masanao Hatakeyama, Isao Kenmochi, Masayoshi Sato, Tadahisa Nakajoh ・ 2006 ・ 群馬県農業技術センター研究報告 第3号 pp.51-55 - ブルーベリーの特性評価と優良品種の選定(追補)
岩手県農業研究センター 技術部 果樹研究室 ・ 2012 ・ 岩手県農業研究センター 平成24年度試験研究成果
論文の内容は、公開されている要旨・本文を日本語でやさしくまとめたものです。くわしい条件や数字は、下の「参考情報」のリンクから原文をご確認ください。
本記事は公的機関・種苗会社・園芸情報サイトなどの公開情報をもとに作成しています(2026年10月時点)。数値は目安であり、品種・地域・土壌により異なります。農薬を使用する場合は必ず登録内容とラベルをご確認ください。
参考情報
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