中国のブルーベリー栽培は2000年に始まったばかりなのに、今では世界一の広さの畑をもつまでになりました。雲南を中心とした中国の産地と季節、韓国・台湾・オーストラリア・ニュージーランドの様子を、日本とくらべながら紹介します。
「ブルーベリーの国」と聞くと、アメリカやカナダを思いうかべる人が多いかもしれません。ところが今、世界で一番広いブルーベリー畑をもっているのは中国です。中国で商業的なブルーベリー栽培が始まったのは2000年のことで、まだ25年ほどしかたっていません(2025年、人民日報海外版・新華網)。それなのに、2020年には栽培面積と生産量の両方で世界一になったと伝えられています(2025年、人民日報海外版・新華網)。
2025年に中国・雲南省の昆明で開かれたブルーベリー会議を伝える記事では、中国の栽培面積は推計78,000ヘクタールとされ、アメリカの約48,000ヘクタール、ペルーの約22,000ヘクタールを大きく上回っています(2025年、FreshPlaza)。この記事では、中国の2024年の収穫量は公式データで78万トン、2020年と比べて197%増えたと紹介されています。
この記事では、中国の数字と主な産地、ハウス栽培と季節の分担を見たあと、韓国・台湾・オーストラリア・ニュージーランドの様子にもふれ、最後に日本とくらべてみます。
中国のブルーベリーの数字は、どの資料を見るかで少しずつ違います。それだけ急に大きくなっていて、数え方がまだそろっていないということでもあります。代表的なものを並べてみましょう。
どの数字を使っても、中国の畑が7万〜9万ヘクタールほどあり、生産量が数十万トン規模であることは共通しています。少し前の正確な統計としては、吉林農業大学の学術誌にのった「中国ブルーベリー産業年次報告」があり、2020年の全国の栽培面積は66,400ヘクタール、生産量は347,200トン、そのうち生で食べる分が234,700トンでした(2020年、吉林農業大学学報の年次報告を伝えるItalian Berry)。
栽培している省も増えました。最初は10の省だけでしたが、2023年には27の省で育てられています(2023年、人民日報海外版・新華網)。
いま中国で一番注目されている産地が、南西部の雲南省です。雲南はもともと野生のブルーベリーのなかまが46種も自生する土地で、これは中国全体の半分以上にあたります(2025年、新華社を伝えるFreshPlaza)。昼と夜の気温差が大きく、日照時間が長く、紫外線も強いことが、甘くておいしい実を育てる条件になっています(2025年、新華網)。
雲南の2024年のブルーベリー栽培面積は約24.9万ムー(約16,660ヘクタール)、生産量は約17.1万トンで、産業の価値は約170億元とされています(2024年、新華網)。全国の生産量の約3割を雲南が占め、そのほとんどが生で食べる用です(2024年、新華網)。
雲南の最大の強みは季節です。収穫期は11月から翌年の5月までで、ほかの果物が少ない時期に出荷できます(2025年、新華網)。人民日報海外版では、雲南の収穫月は1〜6月と8〜12月と紹介されており、ほぼ一年中どこかで収穫しているともいえます(2025年、人民日報海外版・新華網)。
雲南の中でも、南部の紅河ハニ族イ族自治州にある蒙自(もうじ)市は、ハウスのブルーベリーが2,300ヘクタール以上ある大産地です(2025年、新華社を伝えるFreshPlaza)。蒙自の税関を通ったブルーベリーの輸出は2024年に1,425トンで、これは中国全体の輸出の半分以上にあたります(2024年、新華網)。中国のブルーベリーは今では10以上の国と地域に輸出されており、2020年に初めてロシアへ国産ブルーベリーが輸出されました(2025年、新華社を伝えるFreshPlaza)。
雲南のブルーベリーは、山あいの村の暮らしも支えています。蒙自では、売り上げを農家に60%、村の共同の会社に20%、中心となる企業に20%と分ける「622」というしくみが取り入れられ、500以上の家族経営の農場と2,000人以上の仕事を支えています(2025年、新華網)。一方で、全国で畑が増えたことによる値段の上下や、品質のばらつき、全国的なブランドがまだないことが課題とされ、2025年には「紅河ブルーベリー」という地域ブランドが立ち上げられました(2025年、新華網)。
雲南が急に大きくなる前、中国のブルーベリーの中心はほかの省でした。2020年の年次報告では、省ごとの面積と生産量が次のようにまとめられています(2020年、吉林農業大学学報の年次報告を伝えるItalian Berry)。
| 省(2020年) | 面積 | 生産量 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 貴州 | 15,000ha | 85,000t | ラビットアイ系が中心。生食用は約3割 |
| 遼寧 | 7,800ha | 35,000t | ほぼすべて生食用 |
| 山東 | 7,333ha | 33,000t | ほぼすべて生食用 |
| 四川 | 6,667ha | 50,000t | 加工用が多い |
| 安徽 | 6,667ha | 40,000t | 加工用が多い |
| 雲南 | 5,000ha | 30,000t | ― |
| 吉林 | 4,000ha | 15,000t | 長白山の地域 |
2020年の雲南は5,000ヘクタールでしたが、2024年には約16,660ヘクタールになりました(2020年は年次報告、2024年は新華社)。4年ほどで3倍以上に広がった計算です(当サイトの計算)。
中国は南北にとても広い国なので、地域によって収穫の時期がずれます。人民日報海外版によると、収穫月の目安は次のとおりです(2025年、人民日報海外版・新華網)。
南から北へ、季節とともに収穫の場所が移っていく様子は、ヨーロッパや日本のブルーベリーとよく似ています。
中国北部の遼寧や山東では、冬の寒さが厳しいため、ハウスを使って早い時期に収穫する工夫が進んでいます。2020年末の時点で、ブルーベリー用の「日光温室」(太陽の光を利用するハウス)は全国で2,010ヘクタールあり、15,185トンを生産していました。その63%が遼寧、27%が山東にあります。また、ビニールを何列もかけた連棟トンネルは705ヘクタールで、その66.6%が山東でした(2020年、吉林農業大学学報の年次報告を伝えるItalian Berry)。
ハウスで早く実らせる理由は値段です。同じ報告では、1年の中で3月初めから4月初めの値段が一番高く、7月が一番安かったとされています(2020年、同報告を伝えるItalian Berry)。露地の実が出回る夏の前に出荷できれば、それだけ高く売れるのです。
品種は、ほとんどが外国から入ってきたものです。南の地域ではオニール、ミスティ、エメラルドなどのサザンハイブッシュ系や、ブライトウェルなどのラビットアイ系、北の露地ではデューク、ブルークロップ、レガシーなどのノーザンハイブッシュ系が育てられています(2020年、同報告を伝えるItalian Berry)。中国国内でも新しい品種づくりが進み、植物の新品種としての保護を40件以上申請し、15件が認められています(2025年、人民日報海外版・新華網)。
韓国のブルーベリーの面積は2022年に約3,300ヘクタールで、小さなベリー類のなかでは一番広く育てられています(2022年、IBOの数字を伝えるItalian Berry)。以前は露地栽培が中心で、収穫は主に3月から7月でしたが、トンネル(ハウス)栽培とサザンハイブッシュ系の品種が広がったことで、今では1月から8月まで収穫できるようになりました(2022年、Agronometricsを伝えるItalian Berry)。粒の大きさで売り分ける工夫もあり、直径18〜20ミリ以上の大粒は、小さい粒より20〜50%高く売られています(同)。
あたたかい台湾では、ブルーベリーの多くを輸入にたよっています。台湾は毎年約3,000トンのブルーベリーを、アメリカ、日本、チリなどから輸入しています(2026年、中央通訊社を伝えるFreshPlaza)。そこで国内でもハウス栽培を広げる取り組みが始まっていて、苗栗県で約5ヘクタール、嘉義県の阿里山で約30ヘクタールの計画が進んでいます。台湾産の収穫期は3月から7月です(2026年、FreshPlaza)。日本のブルーベリーも、台湾に輸出されているということですね。
アジアの近くにある南半球の国では、日本と季節が反対になります。
オーストラリア政府の貿易投資促進機関オーストレードの資料によると、オーストラリアの2020/21年シーズンのブルーベリー生産量は23,452トン、金額は約4億1,120万オーストラリアドルで、生産者は230ほどです(2020/21年、オーストレード)。輸出は342トンで、主な行き先は香港、シンガポール、インドネシアでした(同)。
オーストラリアは南北に長いので、産地を組み合わせるとほぼ一年中収穫できます。同じ資料では、ニューサウスウェールズ州のコフスハーバー周辺が6月〜2月、クイーンズランド州が4月〜10月ごろ、タスマニア州が1月〜4月、西オーストラリア州のパースが6月〜11月と紹介されています(2022年発行、オーストレード)。
ニュージーランドでは、2023/24年シーズンに約1,000ヘクタールで約4,000トンが作られ、その約75%が国内で食べられています。輸出は約1,000トンで、すべてオーストラリア向けでした。生産者は全国で約100、主な産地はワイカト、ホークスベイ、ノースランドなどです(2023/24年、Blueberries New Zealandの話を伝えるFreshPlaza)。
最後に日本の数字とならべてみます。農林水産省の資料によると、日本のブルーベリーの収穫量は全国で2,264トンで、東京都が326トンで全国1位です(農林水産省「東京都の農林水産業の概要」)。都道府県別では、東京都326トン、長野県252トン、群馬県237トン、茨城県204トン、千葉県109トンが上位です(令和4年産、農林水産省「特産果樹生産動態等調査」を引用した東京都の資料)。
| 国・地域 | 面積 | 生産量 | 主な収穫期 |
|---|---|---|---|
| 中国(全国) | 110万ムー超(約73,000ha超、2024年) | 約50万トン(2024年、新華社) | 地域ごとにほぼ一年中 |
| 中国・雲南省 | 約24.9万ムー(約16,660ha、2024年) | 約17.1万トン(2024年) | 11月〜5月が中心 |
| 韓国 | 約3,300ha(2022年) | ― | 1月〜8月 |
| 台湾 | 苗栗約5ha・阿里山約30haの計画(2026年) | ―(輸入約3,000トン/年) | 3月〜7月 |
| オーストラリア | ― | 23,452トン(2020/21年) | 産地をつないでほぼ一年中 |
| ニュージーランド | 約1,000ha(2023/24年) | 約4,000トン(2023/24年) | ― |
| 日本 | ― | 2,264トン(農林水産省「東京都の農林水産業の概要」) | ― |
中国の約50万トン(2024年)は、日本の2,264トンのおよそ220倍です。雲南省だけでも約17.1万トンなので、日本全体の約75倍になります(どちらも当サイトの計算。年が1年ずれている点に注意)。
大きさはまったく違いますが、共通点もあります。日本の上位は東京・長野・群馬・茨城・千葉と、大きな町の近くに並んでいます。中国でも、ハウスで早く実らせて値段の高い時期に出す北の産地や、冬から春に出荷する雲南のように、「いつ、だれに届けるか」を考えた産地づくりが進んでいます。韓国や台湾がハウスで季節を広げているのも同じ考え方です。
アジアのブルーベリーは、この20年ほどで大きく姿を変えました。中国の広い畑から日本の摘み取り農園まで、同じブルーベリーでも国によって育て方や楽しみ方がずいぶん違うことがわかります。