ブルーベリーはもともと北アメリカの植物です。畑で育てる栽培種と、植えずに育てる野生種(ワイルドブルーベリー)という二つの顔を持つアメリカとカナダの産地を、最新の統計と出典つきで紹介します。
ブルーベリーは、もともと北アメリカの森や野原に自然に生えていた植物です。アメリカ北東部やカナダ東部には、今でも人が植えていない野生のブルーベリーが広い土地に生えています。メイン州の野生ブルーベリー(ローブッシュ・ブルーベリー)は、ニューイングランド北部とカナダの大西洋側にもともと生えている植物です(メイン大学エクステンション)。
一方で、畑で育てる「栽培種」のブルーベリーが生まれたのは、100年ほど前のことです。アメリカ農務省(USDA)の植物学者フレデリック・コビルは、1911年に野生のハイブッシュ(背の高い種類)とローブッシュ(背の低い種類)をかけ合わせることに成功しました。ニュージャージー州ホワイツボグのクランベリー農家の娘エリザベス・ホワイトは、地元の人たちと大きな実のなる野生の木を探し、コビルの研究に協力しました。そして1916年、はじめて栽培種のハイブッシュ・ブルーベリーが商業用に収穫されました(2016年、USDAブログ)。コビルが生んだ「ブルークロップ」などの品種は、今も育てられています(2016年、USDAブログ)。
つまり北アメリカには、①人が育種して畑で育てる栽培種と、②もともとその土地に生えていた野生種(ワイルドブルーベリー)の、二つの世界があるのです。
アメリカ農務省の統計局(USDA NASS)によると、2024年のアメリカの栽培種ブルーベリーの生産量は7億8,946万ポンド(約35万8千トン。1ポンド=約0.45kgで換算)で、過去最高でした。金額は11億4,700万ドルです(2025年、USDA NASS「Noncitrus Fruits and Nuts 2024 Summary」)。アメリカのブルーベリーの約90%が栽培種で、ワシントン州・オレゴン州・ジョージア州の3州で栽培種のほぼ3分の2を生産しています(2025年、USDA経済研究局 ERS)。
州ごとの生産量は次の表のとおりです。
| 州 | 生産量(2024年) | トン換算(約) | 収穫面積(2024年) | 生食用の割合 |
|---|---|---|---|---|
| ワシントン | 2億679万ポンド | 9万3,800トン | 1万7,500エーカー | 約24% |
| オレゴン | 1億6,484万ポンド | 7万4,800トン | 1万4,400エーカー | 約55% |
| ジョージア | 1億3,579万ポンド | 6万1,600トン | 2万3,000エーカー | 約63% |
| ミシガン | 8,374万ポンド | 3万8,000トン | 1万7,000エーカー | 約56% |
| カリフォルニア | 7,691万ポンド | 3万4,900トン | 7,800エーカー | 約73% |
| ノースカロライナ | 4,965万ポンド | 2万2,500トン | 8,000エーカー | 非公表 |
| ニュージャージー | 4,239万ポンド | 1万9,200トン | 1万700エーカー | 約88% |
| フロリダ | 2,935万ポンド | 1万3,300トン | 6,400エーカー | 非公表 |
| アメリカ合計 | 7億8,946万ポンド | 35万8,100トン | 10万4,800エーカー | 約55% |
※出典:USDA NASS「Noncitrus Fruits and Nuts 2024 Summary」(2025年)。トン換算と生食用の割合は、同じ資料の数字(生産量・生食用の量)から計算したものです。1エーカーは約0.4ヘクタール。「非公表」は個別の農家がわからないよう統計局が数字を伏せているものです。
年ごとの変化も見てみましょう。アメリカ全体の生産量は2022年が6億7,147万ポンド、2023年が6億4,391万ポンド、2024年が7億8,946万ポンドでした(2025年、USDA NASS)。とくにジョージア州は2022年の6,948万ポンドから2024年の1億3,579万ポンドへと、2年でほぼ2倍に増えています(2025年、USDA NASS)。
生産量1位のワシントン州と2位のオレゴン州は、面積あたりの収穫量がとても多い地域です。ワシントン州は全米の収穫面積の約17%で、生産量の4分の1以上をしめています(2025年、USDA NASSから計算)。ただし、ワシントン州で生のまま売られるのは約4分の1で、残りの多くは冷凍などの加工用です(2025年、USDA ERS)。2024年の1ポンドあたりの値段は、ワシントン州が0.99ドル、オレゴン州が1.19ドルと、全国平均の1.45ドルより安くなっています(2025年、USDA NASS)。加工用が多いぶん、1ポンドあたりの値段が低めになるのです。
ジョージア州は収穫面積が2万3,000エーカーと全米でもっとも広い州です(2024年、USDA NASS)。南部では、ラビットアイとサザンハイブッシュという、暖かい土地で育てやすい種類が中心です。ジョージア大学の2011年の記事では、州のブルーベリーの約60%がラビットアイ、約40%がサザンハイブッシュで、サザンハイブッシュは4月下旬から、ラビットアイは5月から収穫が始まり、どちらも7月まで続くと紹介されています(2011年、ジョージア大学)。南部は北の州より早く、春から初夏にかけて実をつけるのが特徴です。
ミシガン州は2024年に8,374万ポンドを生産し、1万7,000エーカーで収穫しました。そのうち約56%が生食用です(2025年、USDA NASS)。ジョージア州などの南部より遅く、夏に実る北の産地です。
カリフォルニア州は生産量では5位ですが、2024年の1ポンドあたりの値段は2.47ドルで、主な州の中でもっとも高くなっています(2025年、USDA NASS)。約73%が生のまま売られています。ニュージャージー州は、1916年にはじめて栽培種が収穫された「栽培ブルーベリー発祥の地」です(2016年、USDAブログ)。2024年の生産量は4,239万ポンドで、そのうち約88%が生食用と、生のまま売る割合がとても高い州です(2025年、USDA NASS)。
ブルーベリーの使い道は大きく二つに分かれます。生のままパックで売る生食用(フレッシュ)と、冷凍したり、ジャム・ジュース・お菓子の材料にしたりする加工用です。
2024年のアメリカの栽培種は、生食用が4億3,071万ポンド、加工用が3億5,875万ポンドでした。割合にすると、およそ55%が生食用、45%が加工用です(2025年、USDA NASS)。値段には大きな差があり、2024年の1ポンドあたりの値段は生食用が2.22ドル、加工用が0.526ドルと、4倍以上ちがいます(2025年、USDA NASS)。
これに対して野生ブルーベリーは、ほとんどすべてが加工用、とくに冷凍に回されます(2025年、USDA ERS)。2024年の野生ブルーベリー9,080万ポンドのうち、生食用はわずか145万ポンドでした(2025年、USDA NASS)。メイン大学も、野生ブルーベリーの99%は冷凍で、生のまま売られるのは1%だと説明しています(メイン大学エクステンション)。
アメリカは自分の国でもたくさん作りますが、外国からもたくさん買っています。2025年に輸入した生のブルーベリーは7億2,000万ポンドで、過去最高でした(2026年、FreshFruitPortal/USDA)。アメリカの夏の収穫期以外は、ペルーやチリ、メキシコなどから届くブルーベリーが店頭を支えているのです。
メイン州の野生ブルーベリーは「植えない作物」です。山の上や、約1万年前の氷河が残した平らな土地に、もともと生えている株を手入れして育てます。ひとつの畑に、遺伝的にちがう株が1,500種類も混ざっていることがあります(メイン大学エクステンション)。そのため、実の大きさや色、味が少しずつちがい、野生ならではの濃い味わいが生まれます。
育て方にも特徴があります。8月に収穫したあと、株を草刈り機で刈るか、火で焼くかして地面の高さまで切りそろえます。次の1年は葉や枝を育てる年、その次の年が実をとる年という「2年サイクル」で育てます。農家は土地を半分ずつに分けて、毎年どちらかで収穫できるようにしています(メイン大学エクステンション)。
メイン州には約3万8,000エーカーの商業用の野生ブルーベリーの土地があり、485の農家が管理しています(メイン大学エクステンション)。USDAの統計では、2024年の野生ブルーベリーの生産量は9,080万ポンド(約4万1千トン)、金額は4,925万ドルで、収穫面積は1万9,100エーカーでした(2025年、USDA NASS)。アメリカで統計に出てくる野生ブルーベリーは、すべてメイン州のものです(2025年、USDA ERS)。
歴史も古く、南北戦争(1861〜1865年)のころには北軍に送られ、1886年にははじめて缶詰にされたと伝えられています(メイン大学エクステンション)。
カナダは、西と東でまったくちがうブルーベリーの国です。西のブリティッシュコロンビア(BC)州では栽培種のハイブッシュが、東のケベック州や大西洋側の沿海州(ニューブランズウィック州、ノバスコシア州、プリンスエドワードアイランド州)では野生のローブッシュが中心です。
| くらべる点 | ハイブッシュ(栽培種) | ローブッシュ(野生種) |
|---|---|---|
| 主な産地 | BC州(国内のハイブッシュの94%) | ケベック州、ニューブランズウィック州、ノバスコシア州、プリンスエドワードアイランド州 |
| 面積(2024年) | 1万1,911ヘクタール | 7万1,843ヘクタール |
| 生産量(2024年) | 7万1,497トン | 9万4,111トン |
| 農場出荷額(2024年) | 1億7,760万カナダドル | 8,495万カナダドル |
| 輸出量(2024年、冷凍をふくむ) | 7万1,527トン | 8万6,129トン |
※出典:カナダ農業・農産食料省「Statistical overview of the Canadian fruit industry, 2024」(2025年)。
BC州は、カナダのハイブッシュの94%を生産しています(2024年、カナダ農業・農産食料省)。BCブルーベリー協議会は600以上の生産者を代表する団体で、事務所はBC州のアボッツフォードにあります(BCブルーベリー協議会)。業界紙の記事では、BC州のブルーベリーの土地は1万1,300ヘクタール、年間生産量は7,000万kgを超え、実は9月中ごろまで出回ると紹介されています(Fruitnet)。
2024年のローブッシュの生産量は、ケベック州が4万3,997トンで全国の約47%をしめ、国内一の産地です。ニューブランズウィック州が2万4,076トン、ノバスコシア州が1万6,340トン、プリンスエドワードアイランド州が9,460トンでした(2024年、カナダ農業・農産食料省)。カナダでは野生種の面積が栽培種の約6倍もあり、この点がアメリカとの大きなちがいです。
ブルーベリーは2024年、カナダの果物の輸出額の65%をしめる「カナダ一の輸出フルーツ」でした。最大の輸出先はアメリカで、ハイブッシュは6万5,411トン、ローブッシュは4万670トンがアメリカに送られました。ハイブッシュの輸出金額で2位の国は日本です(2024年、カナダ農業・農産食料省)。日本とカナダは、ブルーベリーでつながりの深い関係にあるのです。
栽培種のブルーベリーの収穫機でもっとも多いのは、木の列の上をまたいで進む「オーバー・ザ・ロウ型」の収穫機です。木をゆらして実を落とし、受け皿で集めます。たくさんの量を少ない人手で収穫できますが、機械が高く、落ちるときに実がきずつきやすいのが弱点です。そのため、今の機械収穫はおもに加工用・冷凍用に使われ、一番品質がよい生食用は多くが手で摘まれています。手摘みでは2〜4日ごとに畑を回る必要があり、働き手も減っています(ミシシッピ州立大学・フロリダ大学、eXtension)。
この課題に取り組んでいるのが、オレゴン州立大学です。生食用を手で摘むと1エーカーあたり6,000〜1万2,000ドルもかかります。1ポンドあたりの収穫費用は、手摘みで0.60ドル、実をやさしく受け止める「ソフトキャッチ」技術をつけた機械では0.15ドルで、75%以上安くなるとされています。オレゴン州の2社が、この仕組みをつけた収穫機を最初に3台購入しました(オレゴン州立大学エクステンション)。ワシントン州で加工用の割合が多いことも、機械収穫がしやすい加工用に向いた産地であることを示しています。
メイン州の野生ブルーベリーは、背が低く地面をはうように広がるため、約100年ものあいだ、クランベリー用の道具に似た金属の熊手(レーキ)で手で収穫されてきました。手での収穫は、野生ブルーベリーづくりでもっとも大きな費用です(メイン大学エクステンション)。
そこでメイン大学では、回転する歯で実をすくい取る「ブラッグ収穫機」が開発され、カナダで650台以上が作られました。1台で8人以上の手作業分の仕事ができると見積もられています。一方で、株の背が低いこと、地面がでこぼこしていること、雑草が多いことが機械化の大きな課題で、地面を平らにならした畑ほど効率よく収穫できるとされています(メイン大学エクステンション)。
アメリカでは、ワシントン・オレゴン・ジョージアを中心に、栽培種のブルーベリーが2024年に過去最高の7億8,946万ポンド生産されました。生食用と加工用はおよそ半分ずつで、加工用の多い北西部では機械収穫が、生食用の多い州では手摘みが活躍しています。
そしてメイン州やカナダ東部では、植えずに育てる野生ブルーベリーが、2年サイクルの昔ながらの方法で守られ、そのほとんどが冷凍されて世界に届けられています。ジャムやマフィンの中の小さなブルーベリーは、もしかすると北米の野原で育った野生の実かもしれません。生のブルーベリーと冷凍のブルーベリー、それぞれのふるさとを思いうかべながら味わってみてください。