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世界のブルーベリー品種と育種会社|特許品種・ライセンス制のしくみ

「エメラルド」「ビロクシ」「ベンチュラ」——世界で育てられているブルーベリーの品種は、だれがどうやってつくり、どんなルールで使われているのでしょうか。大学と民間の育種、特許品種のライセンス制、日本の品種登録制度までをやさしく紹介します。

世界のブルーベリー更新: 2026-10-18

ブルーベリーの「品種」はだれがつくっている?

お米に「コシヒカリ」、いちごに「あまおう」があるように、ブルーベリーにもたくさんの品種があります。日本の観光農園やお店でよく見かける品種だけでも、ハイブッシュ系、ラビットアイ系などに分かれて20種類をこえます(2025年、マイナビ農業)。

こうした品種の多くは、もともと北アメリカでつくられたものです。品種をつくる仕事を「育種(いくしゅ)」といいます。よい性質をもつ木どうしをかけあわせ、何千本もの苗の中から、おいしくて育てやすいものを何年もかけて選びぬく、とても時間のかかる仕事です。たとえば南米チリのホルティフルート社は、新しい品種ができるまでに全体で5〜9年かかると説明しています(ホルティフルート社 公式サイト)。

ブルーベリーの育種をになっているのは、大きく分けて2つのグループです。1つはアメリカの大学や国の研究機関、もう1つは民間の育種会社です。この記事では、それぞれの代表と、品種を使うときのお金のしくみ(ライセンス・ロイヤリティ)、そして日本のルールについて、順番に説明します。

はじまりはアメリカ農務省(USDA)の研究

ブルーベリーを畑で育てる「栽培」の歴史は、意外と新しく、100年ほど前に始まりました。アメリカ農務省(USDA)の植物学者フレデリック・コビルは、1910年にブルーベリーが酸性の土(pH4.5〜4.8)でよく育つことを明らかにしました(USDA)。1911年には野生のブルーベリーどうしのかけあわせに成功し、1911年と1913年のかけあわせで3,000本の雑種が生まれました(USDA)。

コビルは、ニュージャージー州ホワイツボグのエリザベス・ホワイトと協力しました。ホワイトは地元の人たちに呼びかけて、大きな実をつける野生の木を探し、育種の親として集めました。そして1916年、栽培されたハイブッシュブルーベリーがはじめて商業的に収穫されました(USDA)。

この研究から生まれた品種には、「ブルークロップ」「ブルーレイ」「アーリーブルー」などがあります。1942年には、アメリカ東部の生産者が売っていた18品種のうち14品種が、コビルの選抜や育種によるものでした(USDA)。日本でもおなじみの「デューク」(1986年発表)や「レガシー」(1993年発表)も、アメリカ農務省とニュージャージー州の農業試験場の共同研究から生まれた品種です(2025年、マイナビ農業)。

ノースカロライナ州立大学(NCSU)も、1930年からアメリカ農務省と協力してブルーベリーの育種を続けています(NCSU ブルーベリー育種プログラム)。はじめの目的は、アメリカ南東部で広がった病気に強い品種をつくることでした。これまでにハイブッシュ11品種、サザンハイブッシュ16品種、ラビットアイ11品種などを発表しています(同)。日本でも育てられている「オニール」は、1987年にノースカロライナ州立大学とアメリカ農務省が共同で育成した品種です(2025年、マイナビ農業)。

フロリダ大学と「あたたかい地域向け」のブルーベリー

ブルーベリーの多くは、冬にある程度の寒さにあたらないと、春にきちんと花が咲きません。そこで、あたたかい地域でも育つ品種をつくったのがフロリダ大学です。

フロリダ大学では1949年にラルフ・シャープがブルーベリーの育種を始め、アメリカ農務省の育種家ジョージ・ダローと協力しました(2019年、Specialty Crop Grower)。北の地域のハイブッシュと、フロリダの野生種をかけあわせて、寒さが少なくても実がなる「サザンハイブッシュ」という系統を生み出しました(UF/IFAS 園芸学科ブログ)。最初に発表された品種が「シャープブルー」と「フロリダブルー」です(2019年、Specialty Crop Grower)。

1977年からはポール・ライリーンが育種を引きつぎ、32年間で30をこえるサザンハイブッシュ品種を発表しました(2019年、Specialty Crop Grower)。フロリダ大学の資料には、次のような品種と、アメリカの植物特許(プラント・パテント)の番号がのっています(2024年10月、UF/IFAS 資料 HS1245)。

品種名育成した機関・会社発表年メモ
スター(Star)フロリダ大学1995年米国植物特許 PP10,675
ジュエル(Jewel)フロリダ大学1998年米国植物特許 PP11,807
エメラルド(Emerald)フロリダ大学1999年米国植物特許 PP12,165
スプリングハイ(Springhigh)フロリダ大学2004年米国植物特許 PP16,476
スイートクリスプ(Sweetcrisp)フロリダ大学2005年米国植物特許 PP20,027
ファージング(Farthing)フロリダ大学2007年米国植物特許 PP19,341
メドウラーク(Meadowlark)フロリダ大学2009年米国植物特許 PP21,553
ビロクシ(Biloxi)アメリカ農務省 農業研究局(ミシシッピ州ポプラビル、メリーランド州ベルツビル)1998年あたたかい地域向けのサザンハイブッシュ
ベンチュラ(Ventura)フォールクリーク社2013年同社が自社の育種から初めて発表した6品種の1つ
ユーリカ(Eureka)マウンテンブルー・オーチャーズ社(オーストラリア)2010年日本でもハウス栽培されている

(出典:UF/IFAS HS1245〔2024年〕、vaccinium.org、Fall Creek〔2013年〕、マイナビ農業〔2025年〕)

表の中の「ビロクシ」は、アメリカ農務省の研究所が1986年に選び、1998年に発表した品種です。親は「シャープブルー」と「US329」です(Growing Produce)。メキシコで大きなブルーベリー産地がつくられたとき、さらにペルーで産地が広がったときの土台になった品種として知られています(Growing Produce)。

世界の民間育種会社

大学や国の研究機関だけでなく、民間の会社も独自の育種を行っています。代表的な会社を見てみましょう。

フォールクリーク(Fall Creek)は、1978年にアメリカのオレゴン州でデイブ・ブラゼルトンとバーバラ・ブラゼルトンが始めた苗木の会社です(Fall Creek 公式サイト)。1990年代はじめから自社の育種に取り組み、いまはアメリカ、メキシコ、ペルー、スペイン、オランダ、南アフリカ、チリの7か国に苗木生産や研究開発の拠点があります(同)。2013年には自社育種から初めての6品種を発表し、そのなかに、とても早く実がなるサザンハイブッシュ「ベンチュラ」がありました(2013年4月、Fall Creek)。2020年には高品質ブランド「セコヤ(Sekoya)」の事業を始め、「セコヤ・ポップ」など4品種を展開しています(2022年4月、FreshFruitPortal)。

ドリスコルズ(Driscoll's)は、ベリーの会社として有名です。自社だけの特許品種を、遺伝子組みかえではない昔ながらのかけあわせで育て、世界の数百の独立した農家と契約して栽培・収穫しています(2019年10月、Fruit Growers News)。

ホルティフルート(Hortifrut)は、1983年にチリで生まれ、15か国で事業を行う会社です(2026年7月、Blueberries Consulting)。アメリカ・ミシガン州の生産者団体と共同で育種会社「ベリーブルー」をつくり、「プレリュード」「デイブレイク」などの品種を出しています(ホルティフルート社 公式サイト)。また、ミシガン州立大学の「ドレイパー」「リバティ」「オーロラ」などについて、南北アメリカでの独占ライセンスをもっています(同)。

マウンテンブルー・オーチャーズ(MBO)は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州リズモアにある家族経営の会社で、リドリー・ベルが創業しました(2026年7月、Blueberries Consulting)。品種づくりから苗木、栽培、販売までを一つの会社で行っています(同)。代表品種の「ユーリカ」は2010年に発売され、日本でも栽培されています(2025年、マイナビ農業)。

特許品種とライセンス制のしくみ

新しい品種をつくるには、長い年月とたくさんのお金がかかります。そこで、つくった人や会社の権利を守り、使う人から代金(ロイヤリティ)を受けとるしくみがあります。

アメリカでは、さし木などでふやす植物の新品種に植物特許(プラント・パテント)が認められます。期間は出願した日から20年で、そのあいだ持ち主は、ほかの人が勝手にその植物をふやしたり、売ったり、アメリカに輸入したりすることを止められます(アメリカ特許商標庁)。

フロリダ大学の場合、新しい品種は特許をとり、苗木をふやすにはライセンス(許可)が必要です(2024年、UF/IFAS HS1245)。農家はライセンスをもつ苗木屋さんから苗を買えば自分でライセンスをとる必要はありませんが、正しく手に入れたことを示す書類を保管しておくようにすすめられています。そして「ライセンスなしに特許品種をふやすことは法律違反」とはっきり書かれています(同)。ライセンスの窓口は、フロリダ・ファウンデーション・シード・プロデューサーズという団体です(同)。ロイヤリティの70%は育種プログラムにもどされ、次の品種づくりに使われるしくみです(UF/IFAS 園芸学科ブログ)。

民間の会社も、品種ごとにライセンスを結んだ農家や代理店だけが栽培できる形をとっています。フォールクリークの2013年の新品種は、同社か、ライセンスを受けた代理店を通じて提供されました(2013年4月、Fall Creek)。

こうした「守られた品種」は世界で広がっています。チリでは、守られた品種や入れかえ用の品種が出荷にしめる割合が、21%から35%にふえる見込みとされています(2025-26年シーズンの予測、FreshFruitPortal)。ペルーでは、2021年に「ベンチュラ」が約5,290ヘクタール、「ビロクシ」が約5,160ヘクタールで、2品種で全体(約16,536ヘクタール)の63.2%をしめました(2022年4月、Blueberries Consulting)。その後も「ベンチュラ」と「セコヤ・ポップ」が面積をのばし、「ビロクシ」は主役ではなくなりつつあります(2025年12月、Blueberries Consulting)。

権利を守る争いも起きています。MBOは、中国・雲南省の昆明市中級人民法院で、許可なく品種「ユーリカ・サンライズ」をふやして売っていた苗木業者を訴え、勝訴しました。MBOは、中国でブルーベリーの育成者権が守られた初めての成功例だと説明しています(2024年12月、Portal Frutícola)。

日本の品種登録制度と育成者権

日本にも、新しい品種を守る法律があります。それが種苗法(しゅびょうほう)です。種苗法で国に登録された品種(登録品種)には「育成者権」という権利があり、つくった人の許可なく苗をふやして売ることはできません。

大切なポイントは、種苗法で守られるのは、日本で登録された品種だけだということです。農林水産省は「それ以外の一般品種の利用は何ら制限されません」と説明しています(農林水産省「種苗法の改正について」)。アメリカの植物特許もアメリカ国内での権利なので(アメリカ特許商標庁)、外国の品種を日本で守るには、日本でも登録する必要があるということです。

種苗法は2020年12月2日に改正法が成立しました(農林水産省)。おもな変更点は次のとおりです(埼玉県「種苗法改正に伴う埼玉県の対応について」)。

・2021年4月1日から:登録品種の苗を海外に持ち出すことや、栽培する地域を、育成者権をもつ人が制限できるようになりました。また、登録品種の苗を売るときには「登録品種であること」などを表示する義務ができました。

・2022年4月1日から:農家が登録品種を自分でふやす「自家増殖」にも、育成者権をもつ人の許可が必要になりました。

さらに、2026年7月17日には、新しい改正法も成立しています(農林水産省)。

ブルーベリーの例を見てみましょう。農研機構(国の農業研究機関)が育成した「エピルカブルー」と「ケラアンブルー」は、2015年3月25日に登録され、育成者権は2045年3月25日まで続きます(2025年10月、農研機構「出願公表・登録品種リスト」)。この2品種は、農家が自分の畑用にふやすことはできますが、許可の手続きが必要で、有料です(同)。

家庭や農園でブルーベリーを育てる人が気をつけたいのは、登録品種の枝をさし木でふやして、人にあげたり売ったりしないことです。苗を買うときは、ラベルに「登録品種」と書かれていないか確かめましょう。

日本で手に入る海外生まれの品種

日本の観光農園やお店で出会える品種の多くは、ここまで紹介した海外の育種から生まれたものです。マイナビ農業の品種ガイドから、育成元がわかるものを整理すると次のようになります(2025年、マイナビ農業)。

・フロリダ大学:「シャープブルー」(1975年発表)、「ミスティー」(1990年発表、九州南部や沖縄などあたたかい地域向き)、「スノーチェイサー」(2005年発表)

・ノースカロライナ州立大学とアメリカ農務省:「オニール」(1987年)

・アメリカ農務省とニュージャージー州の農業試験場:「デューク」(1986年)、「レガシー」(1993年)

・マウンテンブルー・オーチャーズ(オーストラリア):「ユーリカ」(2010年発売)、「トワイライト」。トワイライトは日本では大関ナーセリーが苗をあつかっています。

このほか、「ブルークロップ」(1952年発表)は、世界でとても人気のある品種として紹介されています(2025年、マイナビ農業)。

実際に産地で育てられている例もあります。静岡県浜松市では、2006年にハウスみかんからブルーベリーに切りかえる農家があらわれ、いまでは20軒以上の生産者がオーストラリア生まれの「ユーリカ」をハウスで育て、1月ごろから7月ごろまで出荷しています(2022年度取材、浜松市)。

いっぽう、日本生まれの品種もあります。日本ブルーベリー協会の福田俊さんが育てた「フクベリー」は、2006年に農林水産省へ品種登録を申請した品種です(2025年、マイナビ農業)。

まとめ

・ブルーベリーの栽培は、アメリカ農務省の研究から始まり、1916年に初めて商業的な収穫が行われました(USDA)。

・フロリダ大学は1949年から、あたたかい地域でも育つサザンハイブッシュを育成し、「エメラルド」「ジュエル」などの特許品種を生み出しました(UF/IFAS)。

・フォールクリーク、ドリスコルズ、ホルティフルート、MBOなどの民間会社も独自の品種を持ち、ライセンスを結んだ農家が栽培するしくみが広がっています。

・アメリカの植物特許は出願から20年、日本の種苗法で守られるのは日本で登録された品種で、2022年からは自家増殖にも許可が必要になりました。

・日本の観光農園で食べられる品種の多くは、こうした世界の育種の成果です。農園で品種名を見かけたら、どこの国のだれが生んだ品種なのか、調べてみるのも楽しいですよ。

本記事は海外の公開資料(主に英語)を日本語に要約・翻訳して作成しています。統計値は資料の発表年時点のもので、最新の値は出典元でご確認ください。

参考情報

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