ヨーロッパでは、冬から春はスペインやモロッコのハウス、夏はポーランドやドイツの露地と、国ごとに季節を分けあってブルーベリーが届きます。主な産地の数字と季節、北欧の野生ビルベリーとの違いを、やさしく解説します。
ヨーロッパのスーパーでは、ほぼ一年を通してブルーベリーが売られています。それを支えているのは、季節ごとにバトンを渡していく産地のリレーです。冬から春は、あたたかいアフリカ北部のモロッコやイベリア半島のスペイン・ポルトガルが担当します。夏になると、ポーランド、ドイツ、オランダといった北の国々が収穫の主役になります。さらに、南半球のペルーやチリからも船や飛行機で届きます。
この記事では、ヨーロッパとアフリカの主な産地がどこにあり、どれくらい作っていて、いつ収穫しているのかを、国ごとに見ていきます。最後に、北欧の森で採れる野生の「ビルベリー」と、畑で育てるブルーベリーの違いも紹介します。
まず全体像です。国際ブルーベリー機構(IBO)の報告をもとにした記事によると、世界のブルーベリーの量(生と加工用の合計)は、2024年の速報で約205万トンとされています(2024年、IBO報告を伝えるFreshFruitPortal)。同じ記事では、2023年の輸入国の上位にアメリカ、オランダ、ドイツが並んでいます。ヨーロッパは、世界でも特に多くのブルーベリーを買っている地域なのです。
スペインのブルーベリーといえば、南西部のアンダルシア州ウエルバ県です。ウエルバはもともと日本でも知られる「イチゴの一大産地」で、2000年代の初めごろから、イチゴ農家がブルーベリーやラズベリー、ブラックベリーにも手を広げたことで、ブルーベリー栽培が育ちました(2020年、FreshPlaza)。
アンダルシア州政府の2024/2025年の報告を伝える記事によると、アンダルシアのブルーベリーの栽培面積は4,700ヘクタール、生産量は推計66,600トンで、1ヘクタールあたりの平均収量は14.8トンでした(2024/25年、アンダルシア州政府報告を伝えるFreshPlaza)。同じ記事では、アンダルシアはEUのブルーベリー生産の約32%を占め、ウエルバ県だけでスペインのブルーベリーの94%以上を作っているとされています。EUの中では、スペインはポーランドに次ぐ規模の生産国です。
ウエルバ県の生産者団体フレスウエルバ(Freshuelva)がまとめた2024/25年シーズンの結果では、ウエルバのブルーベリー生産量は63,150トンで、前のシーズンより8%増えました。輸出額は3億5,080万ユーロで、24%の増加です(2024/25年、Freshuelva発表を伝えるBlueberries Consulting)。収穫の期間を前後に長くできる、早い品種と遅い品種を組み合わせたことが増加の理由として挙げられています。主な輸出先はドイツとイギリスで、ブルーベリーではオランダが3番目の市場になっています(2024/25年、Freshuelva発表を伝えるFruit Today)。
栽培面積の動きも見てみましょう。フレスウエルバによると、ウエルバのブルーベリー面積は2023/24年シーズンで3,610ヘクタールでした(2023/24年、Freshuelva発表を伝えるPortalfruticola)。
ウエルバのブルーベリーの特徴は、「マクロトンネル」と呼ばれる、人が中を歩けるほど大きなかまぼこ型のビニールハウスで育てていることです。アンダルシアの農業研究機関IFAPAの研究者による記事では、ウエルバのブルーベリーは主にマクロトンネルの下で作られており、土に植える方法が一番多い一方で、土を使わずに培地(ココヤシ繊維などの鉢)で育てる養液栽培も増えていると説明されています(2022年、IFAPA研究者の記事・Interempresas)。
ハウスで寒さや雨から守ることで、ほかのヨーロッパの国よりずっと早く、2〜3月ごろから収穫を始められます。現地の農業技術者は、4〜5月まで待つよりも、収穫を2〜3月に早められる早生・中生の品種が好まれていると話しています(2020年、FreshPlaza)。品種では、少し前の記事になりますが、ウエルバの生産者に人気の品種として「ベンチュラ」と「カメリア」が紹介されています(2016年、FreshPlaza)。
アフリカ北西部のモロッコは、ここ10年ほどで一気に伸びたブルーベリーの国です。2000年代の初めに試験的な取り組みとして始まり、北部のララシュ(ルッコス地方)が発祥の地とされています(2025年、FreshPlaza)。いまは北部のララシュと、南部のアガディールが二大産地で(2025年、FreshPlaza)、さらに南のダフラも新しい産地として紹介されています(2025年、FreshPlaza)。
IBOの「世界ブルーベリー報告2026」を伝える記事によると、モロッコの2025年の生産量は84,940トンで、前の年より18.4%増えました。植えられている面積は6,800ヘクタール、そのうち実をつけている面積は5,800ヘクタールです。生のブルーベリーの輸出は82,590トンで、行き先はスペイン(43,110トン)とイギリス(20,180トン)が中心でした(2025年、IBO報告を伝えるFreshPlaza)。スペインに運ばれた分は、そこから別の国へ送られるものも含まれます。実際、アンダルシアが輸入するブルーベリーの65%はモロッコ産です(2024/25年、FreshPlaza)。
モロッコの強みは季節です。南米からの船便が少なくなる1月から5月にかけてヨーロッパへ出荷できるため、ちょうどよい「すき間」を埋められます(2025年、FreshPlaza)。早い産地ではもっと前から出荷が始まり、量の多くは11月下旬から12月初めに本格化します(2025年、FreshPlaza)。
育て方も最新式です。培地を使う養液栽培、密植、細かく水を管理できるかん水設備が新しい農場では当たり前になっていて、マクロトンネルも使われています。品種は、冬の寒さをあまり必要としない「低チル・ゼロチル」と呼ばれるタイプへの切りかえが早く進みました(2026年、Hortidaily)。一方で、水不足や、2026年2月の強風による被害など、自然の厳しさとも向き合っています(2026年、Hortidaily)。
スペインのとなりのポルトガルも、ブルーベリーが伸びている国です。IBOの数字を伝える記事によると、ポルトガルの生産量は2022年に18,000トンで、ヨーロッパ・北アフリカ地域で4番目の規模とされています。過去5年で生産量は2倍になりました(2022年、IBO・Portugal Freshを伝えるItalian Berry)。
輸出量は2021年の5,523トンから2022年の7,500トンへ、35.8%増えています。主な行き先はスペインとオランダ、フランスです(2022年、Portugal Freshを伝えるItalian Berry)。ポルトガル最大級の生産会社は、自分たちの収穫期を1月から7月と説明しています(2024年、Blueberries Consulting)。スペインやモロッコと同じように、春を中心にした産地だといえます。
夏になると、主役は北の国々に移ります。
ポーランドはEUで最も多くブルーベリーを作っている国です。業界紙の記事によると、2024年の栽培面積は約13,000ヘクタール(前年より2.6%増)、生産量は約62,000トンで、前年と同じくらいでした。輸出は約26,000トンで、17%増えています(2024年、Fruitnet・Agronometricsを伝えるEastFruit)。最近は新しく畑を広げるよりも、古い品種を、実がかたく日持ちのよい新しい品種に植えかえる動きが中心です。大手の生産者は、3年で畑の約40%を植えかえる計画を話しています(2025年、EastFruit)。
ドイツ連邦統計局(Destatis)の数字を伝える記事によると、2025年のドイツの栽培ブルーベリーの面積は3,450ヘクタール、収穫量は17,300トンで、前の年より14.4%増えました。ドイツの低木ベリー(ブルーベリーやスグリなど)の面積と収穫量のうち、約38%をブルーベリーが占めています。有機栽培のブルーベリーも590ヘクタールあります(2025年、Destatisを伝えるFreshPlaza)。同じ記事では、人が歩いて入れる高いハウスは主にラズベリーに使われていると書かれており、ブルーベリーは露地での栽培が中心だと読み取れます。
オランダの2026年の収穫は、南部で6月22日に始まり、北部はその約10日後からでした。生産者は「短いシーズンになり、8月の後半にはかなりの量が売れているだろう」と話しています。品種では「リバティ」などの古い品種が少しずつ抜かれ、新しい品種に置きかわっています(2026年、FreshPlaza)。オランダは自国で作るだけでなく、世界中から輸入して周りの国へ送る「玄関口」の役目もしていて、2023年の輸入国の一覧ではアメリカに次いで名前が挙がっています(2023年、IBO報告を伝えるFreshFruitPortal)。
ここまでの数字を表にまとめます。年や数え方(州・県・国)がそろっていない点に注意して見てください。
| 国・地域 | 面積 | 生産量 | 主な収穫期 | 主な栽培のかたち |
|---|---|---|---|---|
| スペイン(アンダルシア州) | 4,700ha(2024/25年) | 約66,600t(2024/25年) | 2〜3月ごろから春 | マクロトンネル(土・養液) |
| モロッコ | 6,800ha(2025年) | 84,940t(2025年) | 主に1〜5月(早い産地は秋から) | マクロトンネル・養液栽培 |
| ポルトガル | ― | 18,000t(2022年) | 1〜7月(大手生産者の例) | ― |
| ポーランド | 約13,000ha(2024年) | 約62,000t(2024年) | 夏 | 露地が中心 |
| ドイツ | 3,450ha(2025年) | 17,300t(2025年) | 夏 | 露地が中心 |
| オランダ | ― | ― | 6月下旬〜8月(2026年) | 露地・機械収穫も |
表を見ると、南のスペインとモロッコはハウスを使って冬から春に、北のポーランドやドイツは露地で夏に、という役割分担がよくわかります。日本でいえば、ハウス栽培で早く出荷する産地と、露地で夏に摘み取りを楽しむ産地が、国をまたいで並んでいるようなイメージです。
ヨーロッパでブルーベリーを特によく食べるのは、イギリス、ドイツ、北欧、そしてベネルクス(オランダ・ベルギー・ルクセンブルク)です。オランダの銀行Rabobankの調査を伝える記事によると、イギリスでは2000年代半ばからブルーベリーブームが始まり、それ以来、一人あたりの消費量は4倍になりました(2025年、Rabobankを伝えるFreshPlaza)。
一方で、EU全体の平均は、アメリカやイギリス、ドイツに比べるとまだずっと少ないとされています。昔からイチゴやラズベリーをよく食べてきたスペインやポルトガルでも、ブルーベリーが急に人気を集めているそうです(2025年、FreshPlaza)。まだ食べる量が伸びる国が多いことが、モロッコやポーランドが畑を広げたり、新しい品種に植えかえたりする理由のひとつになっています。
実際、ウエルバの輸出額が1年で24%増えたこと(2024/25年、Freshuelva)や、モロッコの生産量が1年で18.4%増えたこと(2025年、IBO)は、ヨーロッパの買う力が強いことを示しています。
ヨーロッパには、畑のブルーベリーとは別に、森で自然に育つ「ビルベリー」(学名 Vaccinium myrtillus)があります。スウェーデン語では「ブローベール(blåbär)」と呼ばれ、北欧の人にとってはブルーベリーといえばこちら、というほど身近な木の実です。
畑で育てるハイブッシュブルーベリーとの一番わかりやすい違いは、実の中の色です。ビルベリーの紫色の色素(アントシアニン)は皮だけでなく果肉にも入っていて、その量はアメリカ系の品種のおよそ4倍とされています(2026年、書籍『Blåbär』を紹介するItalian Berry)。畑のブルーベリーは色素が主に皮にあるのに対し、ビルベリーは実の中まで紫色に染まっている、というのが大きな違いです。
ビルベリーは人が植えるのではなく、森の地面に低く広がって育ちます。北欧の森では毎年10億キロ(100万トン)を超える野生のベリーが実り、そのうち実際に採られて使われるのは5〜10%ほどです。採る人の約9割は外国から来る働き手にたよっています(2026年、Italian Berry)。フィンランドの研究では、ビルベリーの年間の実りは9,200万〜3億1,200万キロと年によって大きく変わり、採られるのは全体の5〜6%ほどでした(1997〜2008年の調査、Silva Fennica誌)。
| くらべるところ | ハイブッシュブルーベリー(畑) | ビルベリー(北欧の森) |
|---|---|---|
| 育つ場所 | 人が植えた畑・ハウス | 森の地面(野生) |
| 紫の色素がある場所 | 主に皮 | 皮と果肉の両方 |
| 採れる量の目安 | ポーランドで約62,000t(2024年) | フィンランドで年9,200万〜3億1,200万kgが実る(1997〜2008年) |
日本では、夏に摘み取りを楽しむ観光農園でブルーベリーにふれる人も多いでしょう。これに対してヨーロッパとアフリカでは、スペインやモロッコの大きなハウス農場が冬から春に、ポーランドやドイツの露地の畑が夏に、と国ごとに季節を分けあいながら、大きな市場に向けて出荷しています。
ウエルバのマクロトンネルや、モロッコの養液栽培と低チル品種は、「寒い冬が短い場所でも、工夫しだいでブルーベリーは育つ」ことを教えてくれます。そして北欧のビルベリーは、ブルーベリーのなかまがもともと森の木の実だったことを思い出させてくれます。日本でブルーベリーを食べるとき、地球の反対側では季節ちがいの畑がリレーしていることを、ぜひ思い浮かべてみてください。