スーパーで見かける「メキシコ産」「チリ産」のブルーベリーは、どの国からどれくらい日本に来ているのでしょうか。貿易統計と農林水産省の資料をもとに、生・冷凍・ドライの輸入と、季節ごとの産地の移り変わりを見ていきます。
スーパーのくだもの売り場で、パックのラベルを見てみてください。「メキシコ産」「アメリカ産」「チリ産」と書かれたブルーベリーが、季節によって入れかわりながら並んでいます。日本でもブルーベリーは育てられていますが、一年中おなじように食べられるのは、地球のいろいろな場所から生のブルーベリーが運ばれてくるからです。
国の貿易統計を国際的にまとめたデータ(世界銀行のWITS。もとは日本が国連に報告した通関統計)によると、日本が輸入した生のブルーベリーなどは1,895トン、金額は約2,503万米ドルでした(2024年、WITS/UN Comtrade)。なお、この分類(HS0810.40)には、ブルーベリーのなかまである「クランベリー」や「ビルベリー」もいっしょに入っています。この記事では、この数字を「生のブルーベリーなど」として紹介します。
くらべるものとして、日本国内のブルーベリー収穫量は全国で2,264トンで、そのうち東京都が326トンで全国1位です(農林水産省「東京都の農林水産業の概要」令和8年版)。つまり、生のブルーベリーについては、国産と輸入がだいたい同じくらいの量だということがわかります。
では、どの国から来ているのでしょうか。WITSのデータを年ごとに並べると、次のようになります。数字はすべて生の状態での輸入量です。
| 年 | 合計 | メキシコ | アメリカ | チリ | カナダ |
|---|---|---|---|---|---|
| 2009年 | 約1,225トン | 約9トン | 約526トン | 約395トン | 約76トン |
| 2014年 | 約1,834トン | 約435トン | 約753トン | 約596トン | 約45トン |
| 2019年 | 約1,992トン | 約866トン | 約632トン | 約413トン | 約59トン |
| 2023年 | 約1,830トン | 約925トン | 約460トン | 約419トン | 約24トン |
| 2024年 | 約1,895トン | 約1,107トン | 約453トン | 約270トン | 約42トン |
(出典:各年とも WITS/UN Comtrade、日本の輸入、HS0810.40。キログラムの数字をトンに直し、四捨五入しています)
この表から、大きく3つのことが読みとれます。
1つ目は、メキシコの伸びがとても大きいことです。2009年にはわずか約9トンでしたが、2024年には約1,107トンになり、全体の半分以上をしめるまでになりました(2009年・2024年、WITS)。金額でもメキシコ産は約1,500万米ドルで、いちばん多くなっています(2024年、WITS)。業界誌の分析でも、2024年の日本の輸入はメキシコが約6割をしめ、メキシコ・アメリカ・チリの3か国で95%をこえると紹介されています(2025年、Blueberries Consulting を転載したFreshPlaza)。
2つ目は、アメリカとチリが昔からの大切な相手だということです。2009年はアメリカがいちばん多く、2014年もアメリカが約753トンで1位でした(2009年・2014年、WITS)。
3つ目は、合計の量は2014年ごろから大きくは変わっていないことです。約1,800〜2,000トンのあいだで動いていて、そのなかで「どの国から買うか」の割合が入れかわっています(2014〜2024年、WITS)。
ほかに、2024年にはイギリス(約10トン)、アラブ首長国連邦(約12トン)、ニュージーランド(約0.7トン)などからも少しだけ輸入されています(2024年、WITS)。
ヨーグルトやスムージー、お菓子づくりによく使われる冷凍ブルーベリーは、生とは少しちがう国が中心です。日本の関税の表では、冷凍のブルーベリーは「ベリー」としてラズベリーなどといっしょの区分に入っていて、ブルーベリーだけの量は表から読みとれません(2025年4月1日版、税関「実行関税率表」第8類)。そこで、輸出する側の資料を見てみます。
アメリカのメイン州選出の議員団が出した資料によると、日本の冷凍ブルーベリー輸入ではカナダが57%のシェアをもち、アメリカのシェアは2018年の21%から2022年には15%に下がりました(2022年、米上院キング議員事務所の発表、2023年5月)。同じ資料では、EU(ヨーロッパ連合)のシェアも2倍以上にふえて約9%になったとされています(2022年、同)。また、日本はアメリカの冷凍ブルーベリーにとって3番目に大きい輸出先です(2023年、同)。
このシェアの変化には、関税(輸入するときにかかる税金)が関係しています。日本の関税の表では、冷凍の「ベリー」は、WTO協定の税率で砂糖を加えていないもの6%、砂糖を加えたもの9.6%です(2025年、税関「実行関税率表」)。いっぽう、日本が結んでいる経済連携協定(EPA)の欄の多くは「無税」になっています(同)。カナダはTPP11(CPTPP)によって無税で日本に輸出できますが、アメリカは2019年の日米貿易協定で生とドライのブルーベリーは関税がなくなったものの、冷凍は対象から外れました(2025年7月、FreshPlaza)。アメリカの業界団体は、TPP11が始まった2020年以降、日本向けの輸出が42%へったと話しています(2025年、北米ブルーベリー協議会の説明、FreshPlaza)。
ドライ(乾燥)ブルーベリーについては、上で紹介したとおり、日米貿易協定でアメリカ産の関税がなくなりました(2019年の協定、FreshPlaza)。アメリカ産のドライブルーベリーは、日本に入るときの関税の面で有利になったということです。
ちなみに、アメリカのハイブッシュブルーベリーの業界団体は、日本への輸出量(生と冷凍の合計)を2015年に3,145トンと発表していました(2016年6月、米国ハイブッシュブルーベリー協議会のプレスリリース)。
「ペルーはブルーベリーの大産地なのに、日本ではペルー産を見かけない」と気づいた人もいるかもしれません。これは植物検疫(しょくぶつけんえき)というルールがあるからです。
植物検疫とは、外国から日本にない害虫や病気が入ってこないように、植物やくだものの輸入を国がチェックするしくみです。とくに注意されているのが「ミバエ」という小さなハエのなかまで、くだものの中に卵を産み、幼虫が実を食べてしまいます。農林水産省の資料では、チチュウカイミバエのおもな「寄主植物(すみかやエサになる植物)」として、ぶどう、マンゴウなどとならんでブルーベリーがあげられています(2023年2月、農林水産省 公聴会資料)。
こうした害虫がいる国から生のブルーベリーを輸入するには、相手の国から「輸入を解禁してほしい」という要請を受け、害虫を確実に取りのぞく方法(低温処理など)を両国で話し合い、日本の専門家が現地の体制を確かめ、意見を聞く手続きをへて、ようやく解禁されます。農林水産省は、この手続きを「要請の受付」「協議対象の害虫の特定」「関係者への意見聴取」「現地の体制の評価」「パブリックコメントの募集の完了」という段階に分けて公開しています(農林水産省 輸入解禁協議のページ)。
農林水産省のページから、生のブルーベリーについて協議が進んでいる国をまとめると、次のとおりです。
| 国 | 要請の受付 | いまの段階(農林水産省の公開情報) |
|---|---|---|
| ペルー | 受付ずみ | 2025年6月に協議対象の害虫を特定(チチュウカイミバエ、ミナミアメリカミバエ) |
| オーストラリア | 2010年9月 | 協議対象の害虫の特定まで進んでいる |
| アルゼンチン | 2012年11月 | 協議対象の害虫の特定まで進んでいる |
| 南アフリカ | 2022年6月 | 要請を受け付けた段階 |
ペルーについては、2019年にペルーの駐日大使が「2020年か2021年には日本への輸出を始められるかもしれない」と話していました(2019年11月、Blueberries Consulting)。しかし、植物検疫の話し合いには時間がかかり、2025年6月の時点で「協議の対象となる害虫を決めた」段階です(2025年、農林水産省)。この資料では、ミバエ2種のほかにも8種類の害虫について、すでに対策がわかっているものとして整理されています(農林水産省 ペルー産ブルーベリー生果実の資料)。
なお、農林水産省がまとめている「輸入解禁協議が完了した案件」の一覧(2023〜2025年度)には、アボカドやパプリカはありますが、ブルーベリーはまだ入っていません(農林水産省)。
ブルーベリーは産地によって収穫の時期がちがいます。北半球(日本・アメリカ・カナダ)は夏、南半球(チリなど)は日本の冬が収穫期です。メキシコは日本と同じ北半球ですが、冬から春に多く出荷しています。これを組み合わせることで、一年中ブルーベリーが手に入るのです。
| 産地 | 多く出回る・収穫される時期 | 出典 |
|---|---|---|
| チリ | 出荷のピークは12月中旬〜1月中旬ごろ(第51週〜第3週) | 2025年、FreshFruitPortal |
| メキシコ | 輸出のピークは12月〜5月、とくに3〜4月が多い | 2020〜2021年のデータ、ProducePay |
| 日本(浜松のハウス栽培) | 1月ごろ〜7月ごろ | 2022年度取材、浜松市 |
| 日本(露地・観光農園) | 6月中旬ごろ開園〜8月下旬ごろ閉園が多い | 2025年、マイナビ農業 |
| アメリカ(オレゴン州) | 収穫期は6月〜9月 | 2024年10月、オレゴン州農務局 |
| アメリカ(生のピーク) | 6月〜7月 | 2016年、米国ハイブッシュブルーベリー協議会 |
まとめると、おおよそ次のような流れになります。
冬(12〜2月):チリ産とメキシコ産が中心です。静岡県浜松市では、オーストラリア生まれの品種「ユーリカ」をハウスで育て、1月ごろから出荷しています(2022年度取材、浜松市)。
春(3〜5月):メキシコ産がとくに多い時期です(ProducePay)。
夏(6〜8月):国産の旬です。アメリカ産の生ブルーベリーもこの時期にピークをむかえます(2016年、米国ハイブッシュブルーベリー協議会)。
秋(9〜11月):アメリカ・オレゴン州の収穫は9月まで続きます(2024年、オレゴン州農務局)。メキシコの生産は8〜10月が少ない時期とされています(ProducePay)。
国産と輸入のいちばん大きなちがいは、出回る時期です。国産の多くは6月から8月の夏に収穫され、観光農園のブルーベリー狩りもこの時期に集中します(2025年、マイナビ農業)。いっぽう輸入品は、日本の国産が少ない冬から春に多く入ってきます。つまり、国産と輸入はライバルというより、季節をわけあって一年をつないでいる関係だといえます。
2つ目のちがいは、運ばれる距離です。輸入ブルーベリーは、収穫してから船や飛行機で何日もかけて運ばれます。輸出国では、品種の入れかえも進んでいます。たとえばチリでは、近年あたらしく導入された品種の出荷が49%ふえ、輸出全体の21%をしめるようになりました(2024-25年シーズン、FreshFruitPortal)。
3つ目は、品種の多さです。日本の観光農園では、ハイブッシュ系やラビットアイ系など、たくさんの品種が育てられていて、食べくらべができるのが魅力です(2025年、マイナビ農業)。完熟した実をその場でつんで食べられるのは、国産ならではの楽しみです。
買うときは、パックのラベルで「原産国」をたしかめてみましょう。同じブルーベリーでも、季節によって旅をしてきた距離がちがうことがわかり、くだもの売り場がちょっとした「世界地図」に見えてくるはずです。
・日本が輸入する生のブルーベリーなどは年間約1,800〜2,000トンで、国内の収穫量(全国2,264トン)と近い量です(WITS、農林水産省)。
・生ではメキシコ産が半分以上をしめ、アメリカ、チリが続きます(2024年、WITS)。
・冷凍ではカナダ産のシェアが大きく、関税のちがいがシェアに影響しています(2022年、米上院議員事務所の発表)。
・ペルーなどミバエがいる国の生ブルーベリーは、植物検疫の協議が続いていて、まだ解禁されていません(農林水産省)。
・冬はチリ・メキシコ、春はメキシコ、夏は国産とアメリカ、というように季節で産地が入れかわります。